友禅染の伝統を持つ京都の、北よりに位置する岩倉。たくさんの自然に囲まれたこの地に、私たちの染工房はあります。創業は1978年。ベテランと若い世代の職人さんが、かさねてきた技法と感性をともに生かしながらいまの時代の空気、そして光と風と水を感じて、日々制作しています。日本の美をあまた生み出してきた京都の伝統を受け継ぎ、先に届けたい。心深くに、そんな思いをしたためながら。生地に刷り込まれ、かさなった状態も想定し、とりどめなくある色からいくつかを選び合わせる。それは実にデリケートな仕事。季節感や時代性を大事にする一方、「ちょっとありえへん」遊び心のある色も時おり差し込むことで、ハッとするような柄に出会えるように。これをふまえ、職人さんが1/1000g単位で緻密に測った染料と糊を混ぜ、色糊(いろこ)を作ります。デザインをもとに実際に試し刷りをし、サンプルを作ります。色糊の粘りぐあいも調整しながら、その柄に適した配色や手法を模索します。とくに細かい柄は「わり」と呼ばれる黒い輪郭がにじんで太くなると、とたんに印象も変わるため慎重に。イメージを手仕事で忠実に再現する、大切なプロセスです。染台に布地を張って型を置き、色糊を乗せ、へらで擦りこむ様に染めます。力加減やへらの角度も調節しながら上から下へ。終われば横にずれ、端まで行くとまた戻って別の型で、を繰り返します。ただ表面に乗せるだけではなく、色どうしが馴染むように、ていねいに。この工程を「かく」と言いますが、考えてみればなるほど、絵を描く作業にも似ている気がします。水ぼかしとは、水彩画のようなやわらかいタッチで柄の輪郭をにじませる手法です。手捺染(てなせん)独特の色の深みがありつつ、女性らしい柔らかい色合いをひき出せるのが特徴です。水彩画のようなにじみ、すなわち「ぼかし」具合をより美しく表現するため、幾度も失敗とチャレンジを繰り返しながら考案した「さきら」ならではの独自の手法を取り入れ、熟練の職人が温度と湿度を管理しながら染めていきます。 絶妙な湿り具合を見極め、繊細に少しずつ色を重ねていく、そのタイミングをはかるのも、職人の技。 軽やかな季節の春夏向け商品では、透明感と躍動感にあふれた 「水ぼかし」が数多く登場します。
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